もし岩松さんに出逢っていなかったら、もしドムクス家族会に繋がっていなかったら…
 私達家族 はずっと光の見えない暗いトンネルを抜け出せないでいたと思います。
 本人は現在 32 歳。

 薬物に手を出したのは 18 歳の頃のようですが、私が気付いたのは本人が 22 歳、10 年前に
なります。
 薬物にのめり込んでいく本人と、世間に知られないように必死で隠そうとしていた私との闘い
の毎日。この10 年は、私にとって長く苦しく辛い日々でしかありませんでした。

 元々、人を楽しませることが好きで、明るく活発だった為、常に周りには友達や先輩・後輩と
いった仲間が溢れていました。それがいつの頃からか次第にイライラしたり、キレたり、また平
気で嘘をつくようになりました。目つきも悪くなり、まるで人が変わってしまったかのような本
人の姿を間近で見ては、自分を責め、本人を恨み、悩んでは精神的に落ち込むことばかりでした。

 その頃は本人の気持ち次第で薬物は絶対に止められると思っていた為、説得を続け、毎日のよ
うに本人の部屋をチェックし、関係のありそうな物を全て処分してはこれで大丈夫だろうと自分
なりに達成感を味わっていました。
 今となっては、家族会での様々な学びを通して理解できる正しい知識や言動・行動も、当時の
私には理解できる訳もなく、( 親の私が…)という責任感に駆られ、ただ必死でした。
 もちろん問題が絶えることなどなく、その度に尻拭いに追われる毎日。さすがに心身共に疲れ
果て、考えることは、( どうすれば本人を道連れに死ぬことができるか…。) そんな事ばかりで
した。

 3年前。
  「監禁されていて自分を殺そうとしている人達が向かっているらしいから、今すぐ警察を呼ん
でほしい。」
 いつものように遊び歩いていた本人からの連絡に、様子がいつも以上におかしかったこともあ
り、言われた通り警察へ連絡をしました。
 ⦅致死量に近い大量の薬物を体に入れている。⦆
 検査結果でした。
 結局、自ら警察を呼ぶような形で逮捕となり、3 ヶ月の強制入院、3ヶ月の勾留を言い渡されま
した。守ってきた全てのものが崩れ落ち、( あぁ、終わった....。) と思う喪失感と今後への不
安感はもちろん大きかったのですが、同時に、今だけは本人を見張っていなくてもいいんだとい
う安堵感が不思議と私の心にあったことも正直なところです。
 本人のいない半年。とにかくこれからどうするべきか、どうすることができるか、考えるには
短すぎる期間でした。振り返れば騙され、振り回され、お金も使い果たし…。本人との距離を置
けば置くほど、見えてくるもの、感じるものがありました。
  ( もうこんな想いはしたくない、許したくない、会いたくない…)
 二度と同じことを繰り返すことはできないと、必死で手当たり次第相談をしましたが、納得の
いく答えは得られず、ただただ不安と焦りだけが募り空回りするばかりでした。

 そんな中、携帯でいつものように薬物依存について検索をしている時に、ふと目に止まった体
験談があったのです。私と同じ薬物依存症の息子さんを持つ親の体験談でした。
 同じ境遇のこの人なら、私の気持ちを分かってくれるかもしれない。話をしたい。すがる想い
で連絡をさせてもらったのが岩松さんでした。
 それが私を救ってくれた岩松さんとの出逢いとなります。厳しくも暖かい言葉の 1つひとつが
「バシン」「バシン」と私の心に響き、力となり、前を向いて進もうと思えるようになりました。

 本人も岩松さんのお陰でダルクに繋げて頂くことができ、現在は沖縄ダルクでお世話になり元
気で過ごせているようです。本人に〈居場所〉があるということに心から感謝しています。一時
は許せなかった本人への気持ちも、今は本人の健康と回復を願えるほど、私自身も変わることが
できるようになりました。毎月の家族会に参加することが、今では私の楽しみの 1 つとなって
おり、同じ悩みを持つ方々と気軽に話せる場があることに感謝しています。

皆さんと共に、自信を持って前を向いて進んでいこうと思います。


                                         Yu